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  • 執筆者の写真山田

「自分がやっていることが正しいのかわからなくて不安です」というご質問におこたえします。


臨床の疑問を解決しよう会 研修会講師のセラピスト山田です。自費診療のリハビリスタジオを運営しています。


よく研修会に参加された方から聞く言葉。

「正しいことをやっているのか不安です」ということについて記事にします。


私は、今年で臨床26年目になります。若い方々よりは多少治療ができるという自信はありますが、全ての患者さんに最適な治療をしているか?と問われると100%の自信はありません。できるだけ最適な治療をしたいとは常に思っていますが…。


この「自信のなさ」と「不安感」がイコールだとしたら、僕も「不安」を感じていることになりますが、幸いなことに僕は「不安」はあまり感じません。なぜなら、「100%の自信などありえない。世の中に、これさえ知っていれば、これだけできれば、全て解決します。という知識や技術がない以上、今、自分で出来る限りの知識と技術を提供することしかできない。上手く治療が進む時もあれば、そうでない時もある。うまく進む時にはそれを自分の成功事例として記憶しておくし、上手くいかないなら、なぜ、上手くいかなかったかを精査し不安を抱えこまないで、自分に質問して疑問を解決しようという考え方に自分を置くから。」と、いう塩梅になります。


世の中の多くの事象がそうであるように(例えば、イギリスがEUから離脱したほうがいいのか、そうではないのか、に正解はありませんよね?!結果が全てなので、やってみなければ分かりません。そして、その結果だってイギリスだけの問題ではなく社会全体の経済状況や国と国の間の関係性によって変わってしまうので、不確定要素が満載です。)、私たちが、自分の職業として選んだ職域は、「ただしい答え」というものは存在しません。

もちろん、「片麻痺」という状態が100%治るという知識や技術がこの世の中に存在するのなら、その知識と技術が「ただしい答え」になるわけですが、そんなに世の中甘くはありません。

多くの先人、先輩達が試行錯誤して、今、世の中に出回っている、「ボバース概念」や「CI療法」や「川平法」や「認知運動療法」などもろもろ考え方や技術があるわけですが、色々あるってことは「決定打はまだ無い」ってことですものね。


疼痛に対する治療法で有名な、メイットランド徒手療法やマッケンジー法などはそのあたりとてもいさぎよくて、「マニュアル通りに決められた回数を行ってみて、上手く結果がでなければその時はその方法論が適応でなかったと判断する」ことまで言っています。


という理解を前提にして、でも、私たちの介入で「何かしら変化している」ことも確かです。それが、いい方向の変化なのか、あまり望ましくない方向の変化なのかは、判断基準を適切に身につけていれば、セラピスト自身が客観的に捉えることができるのではないかと思うのです。


客観的な判断基準を身につけるのには、徹底的に勉強して知識量を増やすしかありません。医療施設のFIMやらBIなどというあまり役に立たない評価基準ではなく、「解剖学・運動学・神経科学」に基づいた、ヒトの運動・行動とはどのようなもので、どのような神経系の働きで、どのように遂行されるのか、という知識です。神経系の働きには、もちろん、対象者の認知とか情動とか価値判断も含まれますので、神経科学の中の心理学だって必要な知識です。


知識を得た上で、「では、その適切と思われる動作や行動を促すにはどのように介入したら良いか?」という技術が必要です。


この技術は、講習会や研修会、勉強会で「実技」として提案されます。

この技術が、「確かなものなのか」については、健常者同士の練習で確認できます。健常者で望むような結果が出せたら、その使っている技術そのものは、間違っていない、ということですよね。


しかし、この「間違っていない」技術をそのまま対象者に実施しても多くの場合あまり役には立ちません。

だって、研修会や講習会、勉強会での健常者同士の練習は、「お互いにこの知識を持っていて、その感覚やら動作やらを上手くこなそうという意識外の反応が既に準備されている」からです。上手くできるのは当たり前の条件のもとでの「成功」なわけです。


実際の患者さんは、もちろん良くなるためにセラピストに身体を委ねてはいますが、意識外の気持ちの中には、「こいつ、若すぎて頼りにならねえなあ」とか「今日の看護師はちょっと怖かったなあ」とかあせりや不安感などを併せ持っているはずなんですよね。だから、「ラポールの形成が大切」と言われるわけですよ。


すると、単に技術を持っているだけでは足りないのだ、ということに気づきます。技術は持っていて当たりまえ。その上で、対象者の状況を理解しながら上手くまな板の上に乗っていただくというプロセスだってとっても大切なのです。

だからこそ、あたかもビデオに撮っているかのごとく、「あの時はああ介入したな。あんな状況で、立ち上がりをこんなふうに誘導したな。」ということを反芻(反芻ですよ!反省ではありませんよ!)できるくらいに集中して治療に当たったらいいのにな、と思います。


ということで、「自分がやっていることがただしいのか分からなくて不安です。」という方には、

①「不安」を感じることは当たり前だと知っておいて

②その「不安」はどのような「不安」なのを吟味して(知識が足りない?技術が足りない?ヒトの反応を見て何を感じているかを推察する共感性が足りない?)

③徹底的に勉強すべし! (徹底的に練習すべし!)

で、「不安感」を軽減し、いい仕事しましょうね! (^O^)

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